PART4 しくみ化の技術、第15章 バッファ-最悪の事態を想定する-

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はじめに

仕事も人生も、思った通りには進まないものです。

予期せぬトラブルに見舞われたり、見積もりを大きく超過してしまったりする可能性は、つねにあります。

そうした時に備え、事前にバッファ(余裕)を設けておくことがエッセンシャリストの考え方です。

この章では、想定外の事態に冷静に対処し、計画を軌道修正するための賢明な方法を詳しくご紹介します。

文字数にして約2000字です。
時間にして約5分で読むことができます。

PART4 しくみ化の技術

努力せず、自動的にエッセンシャル思考を実現する

何かをやりとげるには2つのアプローチがある。

非エッセンシャル思考の人は、努力と根性でやりとげようとする。

対して、エッセンシャル思考の人は、なるべく努力や根性が要らないように、自動的にうまくいくしくみをつくる。

クローゼットがあふれ返るまで放置してから、苦労して片づけるのではすぐに嫌になる。

そうではなく、きれいになるしくみを日々の行動に組み込んで、散らかることを未然に防いだほうがいい。

たとえば、大きな袋を用意する。ごみの回収日やリサイクルショップの場所を把握する。定期的に服を処分しに行く日を決めておく。

人は楽をしようとする生き物だ。

だから、なんの苦労もなく、スムーズに正しい行動ができるように、

しくみ化が不可欠だ。

PART 4では、「しくみ化」の技術を紹介していく。

第15章 バッファ-最悪の事態を想定する-

「バッファ」(緩衝)とは、2つのものがぶつからないようにするためのものを言う。

バッファとは、日常生活でたとえると車間距離のことだ。

充分な車間距離をとっていれば、周囲の思わぬ動きに対応できて、事故を防いでくれる。

仕事でも同じで、バッファをとっておけば周囲との衝突を減らし、トラブルを防ぐことができる。

これを読んでいるあなたはこのように思ったことはないだろうか?

「5分もあれば着くだろう」

「この作業なら金曜までにいけるんじゃないかな」

「本気を出せば半年で完成する」

非エッセンシャル思考の人は、条件に恵まれたケースを前提に予定を立てる。

しかし、物事はけっして思うように進まない。

その結果、思わぬトラブルに見舞われたりして思ったような成果は出せない。

一方、エッセンシャル思考の人は想定外のことは起こるものだと知っている。

だから、万が一に備えてバッファをとり、想定外のことがあってもペースを取り戻せるようにしている。

私たちの生きる世の中は余裕がなくなってきている。

車間距離を5センチメートルしかとらずに、時速100キロで走っているようなものだ。

一瞬のミスも許されない。そのため、何をするにもストレスがかかり、つねに追い詰められているような気がする。

この章では、そんな危険な状況を脱して、余裕を取り戻すためにバッファをつくるコツを紹介していく。

♢徹底的に準備する

人類初の南極点到達をめぐって競いあった、ロアール・アムンセルとロバート・スコットという人物がいた。

この2人が率いるチームはどちらも南極点を目指していたが、やり方は大きく違っていた。

アムンセンは最悪の事態を想定し、準備を怠らなかった。

一方、スコットは楽観的に、なんとかなると考えていた。

スコットは温度計を1つ、チームの食料を1トン持参し、知識は最低限。

対してアムンセンは、温度計を4つ、チームの食料を3トン持参し、あらゆる資料を読んで知識も多かった。

その結果、無事に南極点に到達できたのはアムンセンのチームだった。

スコットのチームは残念ながら、途中で無念の死をとげた。

♢見積もりは1.5倍で考える

仕事の見積もりが甘すぎて、締め切りに間に合わなかった経験がありませんか?

これは、計画錯誤(プランニング・ファラシー)によるものです。

計画錯誤とは、ダニエル・カーネマンが1979年に提唱した言葉です。

作業にかかる時間を短く見積もりすぎる傾向のことを言います。

なぜ実際よりも短く見積もってしまうのかという理由については諸説ある。特に、「周りによく見られたいから」という説は興味深い。

実際に、匿名で見積もりをさせたら、計画錯誤は起こらなかったと、という報告もある。

理由はどうであれ、私たちは何をするにも遅れる傾向にある。

では、どうすればいいのだろうか?

解決策としては、見積もった時間からさらに1.5倍に増やせばいい。

♢シナリオ・プランニングでリスクを軽減する

ペンシルベニア大学ウォートン・スクールでリスク管理・意思決定センターのセンター長を務めるアーワン・ミシェル=カージャンは、誰もがリスクマネジメントの手法を学ぶべきだと主張する。

彼は世界銀行と提携し、世界でも特に脆弱な85カ国についてリスク調査を実施した。

当時58位だったモロッコに、戦略的なリスク管理のためのアクションプランを提示した。

このアクションプランは個人の活動に応用できる。

仕事や家庭について、次の5つのことを考えてみよう。

①この活動にはどんなリスクがあるか?

②最悪の場合、どんなことになるか?

③周囲への影響はどのようなものがあるか?

④そのリスクは自分にとって、どの程度の経済的負担になるか?

⑤リスクを減らすためにどのような投資をおこなうべきか?

エッセンシャル思考の人は、すべてが思い通りにいかないことを知っている。だから、不測の事態が引き起こすダメージをできるだけ緩和するために、あらかじめバッファを計画に組み込んでおくといい。

結び

私たちの日常生活は、車間距離ほとんどなく高速で走行している状態に等しい危険な状況にあると言えるでしょう。

ちょっとした油断が重大な事故につながりかねません。

そうした過酷な環境から抜け出すには、エッセンシャリストのようにバッファをたっぷりと設けることが不可欠です。

締切や見積もりに余裕を持たせ、万が一のリスクにも対処できるよう備えましょう。

最悪の事態を想定し、準備を万全に整えることで、あなたの活動はより確実性と安定性を増すはずです。

この機会に、自分の行動にバッファを設ける習慣を身につけてみてはいかがでしょうか。

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