PART1 エフォートレスな精神、第1章 INVERT -転回- 頑張れば成果が出るとはかぎらない

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はじめに

ストレスを感じている皆さん、今こそエフォートレスな精神を取り入れる時です。

余計な心労から解放され、素晴らしいパフォーマンスを発揮するチャンスがあなたを待っています。

この記事では、頑張りすぎずに成果を出す方法をご紹介します。

この記事は約3000字です。
時間にして約5分で読むことができます。

PART1 エフォートレスな精神

まず、エフォートレスな精神とはどのようなものか?

それは、心身の重荷がなく、頭がすっきりしている状態のことだ。

具体的な例を挙げよう。

WNBA(アメリカの女子プロバスケットボールリーグ)にエレーナ・デレ・ダンというスター選手がいる。

彼女は史上最高にフリースローが上手い、キャリア通算の成功率は93.4%だ。ポストシーズンを含めると、96.4%になる。男女をみてもトップの成功率だ。

成功の秘訣は子どものころに学んだシンプルな方法を貫いていることだ。

フリースローラインの前に立ち、右足を真ん中のポイントに置き、左足をそれに合わせる。ちょうど3回ボールをバウンドさせる。直角に曲げた腕をすっと伸ばし、手首をスナップさせてボールを手放す。

「シンプルにやれば間違えることはありません」と彼女は言う。

さらに、「何より大事なのは、考えすぎないこと。フリースローのいちばんの敵はごちゃごちゃ考えてしまうことなんです」

ダンの成功の秘訣は、頭の中がすっきりしている状態。つまり、エフォートレスな精神だ。

人の脳は処理能力が非常に高いスーパーコンピュータに似ている。

しかし、処理能力が高いのは最適な環境のもとでの話しだ。

ハードドライブに余計なファイルや履歴が詰まっていると処理が遅くなる。

同様に人間の脳も、頭のなかに不要な考えや、ネガティブな感情があると、しこうが妨げられる。

その結果、最高のパフォーマンスが出せなくなる。

なぜそうなるのか?

認知心理学に「知覚的負荷」という概念がある。

脳は普段から多くの思考を処理している。その際、「感情価」が高いものごとにエネルギーを使うようにできている。

たとえば、恐怖や怒りといったものだ。

だから、強い感情があると、脳がそちらにエネルギーを使うので、本当に大事なことをやる余裕がなくなってしまうのだ。

頭の中から余計なものを取り除けば、今ここに集中できる。

そして今やるべきことを、余裕でこなせるようになる。

このPART1では、エフォートレスな精神を手に入れるための方法や考え方を紹介する。

第1章 INVERT -転回-

頑張れば成果が出るとはかぎらない

キム・ジェンキンスは午前4時に資料を作っていた。

最近、勤務先の大学が運営方針を変更し、職場が大きく混乱していた。

そのせいで何をするにも面倒な手続きが必要で、余計な時間と労力がとられていたからだ。

今までは優先順位を大事にし、重要な仕事をきちんとやり遂げてきた。

しかし、今までと同じ量の業務をこなすことは、ほぼ不可能だった。

そんなある日、キムの率いる動画作成チームが、一学期分の講義を動画で記録するように頼まれたのだ。

以前であれば、イントロからエンディング、BGMをつけるなどして最高の動画を作ろうと全力で取り組むところだった。

しかし今回は、どうすれば苦労せずに求められている成果を出せるかと考えてみた。

教授と話してみたところ、一人の生徒のために作るものだとわかった。

その生徒はスポーツの試合などで授業に出られないことが多く、動画でキャッチアップしたいという。

講義の内容さえ把握できれば、演出は何もいらない。

それを聞いたキムはこう提案した。

「それなら、講義に出ている学生にスマホで録画するよう頼んでみたらいいのでは?」

教授はこの提案を受け入れてくれた。

チームで数カ月も取り組む代わりに、数分の会話で見事に問題が解決した。

「どうしてこんなに大変なんだ?」と問うのではなく、「どうすればもっと簡単になるのか?」と考えてみよう。

苦労は本当によいことなのか

私たちは大事な仕事に持てる時間とエネルギーのすべてを注ぎ込み、時には心の健康さえも犠牲にする。

まるで自己犠牲にこそ価値があるといわんばかりだ。

「大変だがやりがいのある」仕事に価値が置かれ、「楽して儲ける」のは悪いことのように扱われる。

だが、あえて問いたい。

大事な仕事をやり遂げられない最大の理由は、まさに困難だからではないのか。そして何かが困難だと感じるのは、もっと、簡単なやり方を見つけていないからではないか?

最小努力の法則

人の脳は、困難なことを避けて、簡単なことを好むようにできている。

これは、認知容易性バイアス、あるいは最小努力の法則と呼ばれるものだ。

たとえば、何かがほしいと思ったとき、人はもっとも苦労の少ないやり方でそれを得ようとする。

進化的な観点から観ても、こうしたバイアスは有利に働いてきた。

もしも、人の脳が難しい事を好むようにできていたら、種の生存は難しかっただろう。

なぜなら、入手が難しい食べ物を手に入れようとは思わないからだ。

もっとも少ない努力で成果を出そうとする傾向が、ヒトという種の生存を可能にしてきた。

「困難な方法をとる」というのは、自然の傾向に対抗しているということ。

それをやめて、強みに変えてみたらどうだろうか?

「どうやったらこの仕事がもっと楽になるか?」と考えてみよう。

頑張りすぎは失敗のもと

著者はある重要なクライアントから、リーダーシップに関するプレゼンテーションを依頼された。

コンサルタントのキャリアが軌道に乗ろうとしていたころだった。

プレゼンテーションが上手くいけば、翌年以降の契約は確実だ。

スライドは既に完成していた。

だが、最初のプレゼンの前日に手を加えてしまった。

もっといいものができる気がしたのだ。

私は自分のアイデアに夢中だった。

一から資料を作り直し、徹夜でスライドを修正した。

配布資料も作り直し、シナリオも書き換えた。

ひどい寝不足のまま本番を迎えた。

結果はご想像の通り、大失敗だった。

なにが間違っていたのか明白だ。

成果を焦るあまりに考えすぎてしまった。

そして、頑張りすぎてしまったことだ。

この経験から得た教訓は

「頑張りすぎは、失敗のもと」

ということだ。

考え方を180度逆転させる

エフォートレス思考は、問題に対するアプローチを180度逆転させ、「どうすれば楽になるだろう?」と考えるアプローチだ。

努力と根性で突き進むのではない。

心を落ちつけて、集中した状態で問題を解決する。

そうすれば、より少ない努力で成果を出せる。

大事なことをやり遂げるためには、2つの道がある。

1.人の限界を超えて働き、力ずくで不可能を可能にする

2.もっといいやり方を探し、余裕で成果を出す

たとえば、著者はオフィスの掃除をしていて、古いプリンターが目についた。

ゴミに出すには大きすぎるし、業者を手配することも手間だ。

そこで、「どうしたら簡単に処分できるか?」を考えた。

ふと窓の外に目をやると、工事現場の作業員が歩いていた。

著者は作業員に「無料でプリンターがほしくないか?」と聞いてみた。

もちろん、作業員は「ぜひほしい」と答えた。

その場でプリンターを引き取ってもらった。

たったの2分で問題は解決した。

難しいのは問題そのものではなく、私たちの考え方かもしれない。

不可能を可能にするために、違う角度からアプローチしてみよう。

いちばん簡単な問題を見つける

ビジネス特化型SNS、LinkedInの共同創業者であるリード・ホフマンはビジネス戦略で大事なことについて、こう述べている。

「ビジネス戦略でもっとも大事なのは、いちばんシンプルで、簡単で、価値のある問題を解決することです。実際に、いちばん簡単な問題を見つけるのは戦略の要です」

シンプルで簡単な問題こそ、チャンスは隠れているかもしれない。

もしも、日々が困難で、上り坂で大きな岩を押し上げているような気がするなら、一度立ち止まってみたほうがいい。

「楽をするのは悪いことだ」という思い込みは捨てよう。

難易度を下げれば、力を入れなくても前に進む。

大きな困難を感じたら、「やり方が悪いのではないか?」と振り返ってみよう。

結び

人生は短く、無駄に力を使う必要はありません。

エフォートレスな精神で、心の余裕を持ちながらも高いパフォーマンスを発揮してみませんか?

簡単なことから始めて、日々の生活にエフォートレスを取り入れてみましょう。

きっと毎日が楽しく感じられるはずです。

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