第8章 SIMPLIFY -削減- 手順を限界まで減らす

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はじめに

時代を先取りした革新的なアイデアは、しばしば単純なところから生まれます。

1998年、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスは、購入プロセスの簡素化を目指していました。

当時はオンライン購入が一般的ではなく、複雑な手順で顧客を混乱させていたのです。

しかし、ベゾスの狙いは明確でした。

「最小の手間で注文を完了できないだろうか」。

そしてアマゾンは、ワンクリック購入の特許を取得し、シンプルながら大きなイノベーションを生み出しました。

第8章 SIMPLIFY -削減- 手順を限界まで減らす

1998年2月、ペリ・ハートマンはシアトル中心部にある4階建てのビルから外に出た。

アマゾン創業者のジェフ・ベゾスとアマゾンのソフトウェア開発リーダーを務めるシェル・カファンとランチミーティングをするためだ。

ミーティングの内容は購入プロセスの改善について。

ハートマンは顧客の同線を分析し、各ステップを簡略化するために知恵を絞っているところだった。

オンラインショッピングが今ほど一般的ではなかった時代、数々の入力画面は顧客を混乱させていた。

実際、途中で離脱していく顧客も多かった。

ベゾスのゴールは明確だった。

「最小の努力で注文を完了させたい。何度もクリックするのではなく、一度だけですませられないだろうか」

アマゾンはワンクリック購入で特許を取り、大きな競争優位性を手に入れた。

このシンプルなアイデアが長期的にもたらした価値を正確に知ることができないが、アマゾンの業績は現在の通りだ。

最低限必要なステップは何か

先程の話で印象的なのは、ハートマンが購入の各ステップの簡略化の為に数カ月の時間を費やしながら、ステップ自体を減らすことを思いつかなかった点だ。

一つひとつの手順を小さく削るより、不要なステップを全部取り除いたほうが、手っ取り早くて効果が高い。

これはどんなプロジェクトにおいても同じだ。

「このプロジェクトを完了するために、最低限必要なステップは何か?」
を考えよう。

不要なステップは、単に不要なのだ。

そして、それを排除すれば重要なプロジェクトに全力を注ぐことができる。

どんな分野にもいえることだが、価値のない余計なものを付け加えるよりも、完成させるほうがはるかにいい。

完成させることはそれだけでも誇れることだ。

成功したいなら、まず終わらせよう。

各ステップを単純化するのではなく、不要なステップをなくそう。

必要以上の努力は誰のためにもならない

著者の子ども時代の親友は、少ない時間しか勉強しないのに、いつも著者よりいい成績を取っていた。

なぜか?

先生に言われたことだけをやっていたからだ。

著者はまったく逆だった。

必要以上に資料を読んだ。

言われていないことまで調査したし、余計なことをやって、肝心のタスクが終わらないこともあった。

重要なことで「もうひと頑張り」するならいい。

だが、必要ないのに表面的な装飾を加えるとなると話は別だ。

たとえば、プレゼンでも派手なグラフィックや動画をつかってスライドを作る必要はない。

著者がプレゼンするときは、スライド6枚、1枚あたりの文字は10単語以下を目安にしている。

余分なものは自分にとっても聞き手側にとっても邪魔にしかならない。

必要のない努力はすることをやめよう。

頑張りすぎて挫折するより、最低限やるべきことを終わらせよう。

ゼロから始める

アップル社の優秀なプロダクトデザイナーチームはスティーブ・ジョブズをあっと言わせるつもりでいた。

彼らのデザインしたiDVD(音楽や動画、写真をDVDに書き込むアプリ。現在は廃止されている)は美しくクリーンなデザインで、多機能ながらシンプルな機能性が自慢だった。

もともとは1000ページもの取扱説明書を必要とするもので、削りに削った使い手の操作性を向上させた。

ところが、ジョブズの反応はいまひとつだった。

ジョブズはホワイトボードに歩み寄り、四角をひとつ描いた。

「これが新しいアプリケーションだ。ウィンドウがひとつ。動画をウィンドウにドラッグする。そして『作成』ボタンをクリックする。以上。そういうものをつくるんだよ」

当時のデザイナーチームは、ひどく複雑な製品からスタートし、それを小さくしようとした。

だが、ジョブズは逆を行った。

ゼロからスタートして、「最低限必要なステップは何か」を考えたのだ。

あまりに手順が多すぎて混乱しているプロジェクトがあるなら、ゼロから始めてみよう。

やらないことを最大限に増やす

「アジャイルソフトウェア開発宣言」は、ソフトウェア開発の無駄や難解な部分をなくし、効率的によりよいソフトウェアをつくるための原則をまとめた文書である。

その原則のひとつは、「シンプルさ(やらないことを最大限に増やす技術)が本質だ」

この原則は日常のあらゆるプロセスに適用できる。

「やらないことを最大限に増やす」にはどうするか、を考えればいい。

最終的な目標は何であれ、価値を生み出すステップだけに集中すればすべきだ。

そうすれば、本質的なことに使える時間やエネルギー、脳のリソースが増える。

やらないことを最大限に増やそう。

結び

時には、すべてをゼロベースで考え直す必要があります。

必要最低限のステップを見極め、不要な手順は排除することで、本質的な作業に集中できるようになります。

日々の生活でも、やらなくてよいことを最大化することがシンプルな生き方への第一歩となるでしょう。

一つひとつの手順を見直し、単純化への挑戦を続けましょう。

そこから思わぬ自由と可能性が広がっていくかもしれません。

今日からあなたなりの”ワンクリック”を実践し、理想の毎日に一歩近づきませんか?

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