第9章 選抜 -もっとも厳しい基準で決める-

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はじめに

忙しい毎日に追われ、本当に大切なことに専念できていますか?

あなたは、数多くの選択肢の中から本当に重要なものを選び抜く力が求められています。

エッセンシャル思考には、そのための確かな方法があります。

それは「厳しい基準」を設けて選択することです。

この章では、選択の基準をいかに決め、チャンスを見極めるかについて解説します。

的確な選択ができれば、本当に大切な活動に集中できる生活が手に入るはずです。

この記事の文字数は約2200字です。
時間にして約5分で読むことができます。

第9章 選抜
-もっとも厳しい基準で決める-

クローゼットを想像してみてほしい。

「いつか着るかもしれない」というゆるい基準を使っていたら、クローゼットはめったに着ない服でいっぱいになってしまう。

これを「この服が本当に大好きか?」という基準に変えると、中途半端な服が消えるのでもっといい服を入れるスペースが生まれる。

同じことは、あらゆる決断に当てはまる。

どうでもいいことを捨てられずにいると、本当に重要なことをする余裕がなくなってしまう。

♢90点ルールを取り入れる

著者は同僚と一緒にdスクールの「人生の本質からデザインする」授業への参加者を選抜した。

基準に従い、応募者を10段階で評価していく。評価9点以上なら、文句なしの合格。

6点以下は不合格。

問題は7~8点の応募者だ。

著者らは誰を受け入れるか頭を悩ませていたが、「悪くない程度の選択はすべて拒否したほうがいい」ということに気付いた。

したがって、評価7~8点の応募者は不合格にした。

この決断のしかたを「90点ルール」ということにする。

90点ルールは、トレードオフを強く意識させるやり方だ。

厳しい基準を設けて、大多数の選択肢を容赦なく却下することになる。

厳しい基準を設けるという行為は、間違いなくあなたに自由を与えてくれる。

他人や世の中や偶然に決められるのではなく、自分自身で選ぶ自由だ。
90点ルールは厳しすぎるかもしれない。

しかし、妥協すれば自分が損をするだけだ。

非エッセンシャル思考の人は、いつも消極的な基準でものごとを選んでいる。

「上司に言われたからやる」「誰かに頼まれたからやる」「みんながやっているからやる」という基準だ。

明確で厳しい基準があれば、誰でも不要な選択肢をシステマティックに却下し、重要な選択肢を選びとることが可能になる。

♢明確で厳しく、そして正しい基準を採用する

イギリスの家具会社Vitsoe(ヴィツゥ)の社長をつとめるマーク・アダムスは、27年のあいだ明確で厳しい基準を貫いてきた。

ヴィツゥはたった1種類の製品しかつくらない。

606シェルビング・システムという収納システムに何十年もこだわり続けてきた。

なぜか?

ヴィツゥは非常に厳しい基準で製品を選んでいる。

その基準にかなう製品がほかにないなら、それをつくりつづけるだけだ。

ただし、ヴィツゥのすごいところはそれだけではない。

特筆すべきは、製品の基準以上に厳格な、人材採用基準だ。

人材採用のプロセスは、非常に厳格でシステマティックだ。

電話面接、社内のさまざまな人間との面接、1日体験入社。

1日体験入社のあとはヴィツゥの社員にアンケートが配られる。

アンケートの内容は「彼/彼女は、この会社で働くのが好きになると思いますか?」「彼/彼女が入社したら、楽しく一緒に働けると思いますか?」だ。

こうしてお互いの相性を探り、うまくいきそうならさらに何度かの面接を経て採用となる。もしも社員の反応が微妙なら、その候補者はアウトだ。

彼らの厳しい基準は、何がうまくいき、何がそうでないかを冷静に観察した結果だ。

絶対にイエスだと言い切れないなら、それはすなわちノーである。

♢チャンスを正しく選別するには

選択肢から何を選ぶか、というのも難しい問題だが、もっと難しいのは思わぬチャンスが転がってきたときだ。

意外な方向からの転職の誘い。金になるプロジェクトの話し。給料は出ないが、以前からやりたいと思っていた企画。

こんないい話しは、今を逃したらもうないかもしれない。
これを選んだせいで、数日後にやってくる理想的なチャンスにノーを言うことにならないだろうか?

デュアルテ・デザイン社のCEOであるナンシー・デュアルテも会社の方向性について同じジレンマを抱えていた。

もともと、彼女の会社は多様な要望に応えるデザイン会社だった。企業イメージ、ウェブサイト制作、プレゼンテーション制作など、何でもこなす。
だが、「これだ」という個性に欠けていた。

ナンシーはジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』を読んだ。

そこには「本当にやりたいことや得意なことがあるなら、そのことだけをやりなさい」と書かれていた。

そこで、ナンシーは「プレゼンテーションのデザイン」こそ自分の強みだと思い当たった。

たくさんのチャンスや仕事を断り、自分たちの専門分野をとことん追求していった。その結果、デュアルテ・デザイン社はプレゼンテーションの仕事に特化してノウハウを積み上げ、世界で随一のプレゼンテーション会社となった。

突然迷い込んできたチャンスを正しく選別するために、次の3つのプロセスを紹介する。

1.そのチャンスについて記述する。
2.考慮するに値するチャンスの「最低限の基準」を3つ書き出す
3.考慮するに値するチャンスの「理想の基準」を3つ書き出す


最低限の基準を満たしていなければ却下する。
理想の基準を満たしていなければ却下する。
すべて満たしているものだけが、考慮に値するチャンスとなる。

♢「これしかない」と思えることを選ぶ

選択の基準を厳しくすると、サーチエンジンが精度を増す。

たとえばグーグル検索で「ニューヨークの美味しいレストラン」と検索すると、広い範囲の検索結果が出る。一方、「ニューヨークのブルックリンで最高のピザ屋」と検索すればかなり絞られてくる。

検索結果は多いよりも、少数精鋭のほうがいい。私たちの目的は「これしかない」と思えることを、ひとつだけ見つけることなのだから。

結び

いかがでしたか?

エッセンシャル思考には、明確で厳しい基準を設けることが重要だということがわかりました。

そうすれば、多くの選択肢の中から本当に大切なものだけを選び出せるのです。

中途半端な選択はすべて却下する。

そして突然やってくるチャンスも、あらかじめ決めた基準で冷静に判断する。

このように徹底的に選び抜くことで、あなたは本当に大切な活動に集中できる生活を手に入れられるはずです。

今こそ、自分なりの選択基準を決め、エッセンシャルな生き方を始めてみませんか?

きっと新しい自分に出会えることでしょう。

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