はじめに
[概要]
エッセンシャル思考(著者:グレッグ・マキューン、かんき出版)
の要約です。
本書はPART1~4で構成されています。
この記事ではPART2の部分を要約しています。
内容は全て本書から引用しています。
公開してから1週間は無料です。その後は有料(¥490)となります。
[分量]
ページ数にして62ページ分。
1ページ約1分とすると、約1時間で読む分量です。それを約15分で読めるように凝縮しました。
ちなみに、妻は16分で読みました。
この本は、こんな人におすすめです。
・少ない成果でより良い成果を出したい人
・仕事を断るのが苦手な人
・働きすぎて疲れているなと感じている人
感想、著者及び訳者についてブログに書いています。
気になる方はぜひどうぞ。
『エッセンシャル思考』を読んでの感想 | 「技術」が9割 私がこの本を読もうと思ったきっかけは、表紙に書いてある「最小の時間で成果を最大にする」という文が気になったから。 この本を hata-toshi.com
前回のPART1はこちらからどうぞ。
PART2 見極める技術
多数の瑣末なことのなかから、少数の重要なことを見分ける
PART 2では、数ある選択肢のなかから本質的なものを見極めるための技術を紹介する。
非エッセンシャル思考の人は、多くのことに手を出すが、すべて中途半端な結果しか得られない。
それに対しエッセンシャル思考の人は、何かに手を出す前に、幅広い選択肢を慎重に検討する。
そして、「これだけは」ということだけ実行する。
見極めることこそ、エッセンシャル思考の神髄だ。
本当に重要なものごとを見極めるために必要なことは以下の5つ。
・じっくりと考える余裕
・情報を集める時間
・遊び心
・十分な睡眠
・何を選ぶかという厳密な基準
エッセンシャル思考の人は睡眠を大切にし、時間をかけて調査・検討し、意見を交わし、じっくり考える。
そうすることで本当に重要なものを見極めることが可能になる。
第5章 孤独
-考えるためのスペースをつくる-
フランク・オブライエンが創業した会社「カンバセーション」
この会社はビジネス誌『インク』の選ぶ「アメリカでもっとも急成長をとげた民間企業」にランクインした優良企業だ。
この会社では月初めの月曜日、社員全員を集めて1日の集中セッションを実施する。外部との連絡は一切禁止。顧客にも周知している。
目的は落ち着いて考える時間をとるためだ。
オブライエン曰く、このセッションが仕事の質のバロメーターになっている。
もしも、忙しすぎてセッションに出られないという人がいたら、それは無駄な仕事が多すぎる。
あるいは本当に、もっと人を雇うべきかのどちらかだからだ。
忙しすぎて考える時間がないなら、それは仕事が多すぎる。
シンプルな理屈だ。
この忙しい世の中で、誰にも邪魔されずに考える余裕が自然に生まれるわけがない。
あえて時間をとらなければ、誰も考える余裕など与えてくれない。
非エッセンシャル思考の人は、とにかく目の前のことに反応する。
エッセンシャル思考の人は、調査と検討にたっぷり時間をかける。
♢集中せざるをえない状況をつくる
著者は、スタンフォード大学デザイン研究所(以後、dスクール)で考える余裕の大切さを再認識した。
dスクールには「ブース・ノワール」という小部屋がある。定員は3人、窓はなく、遮音されている。
つまり、考えるためだけの部屋だ。
この集中して考える部屋で、学生たちは思考を研ぎ澄ませている。
このようにdスクールは思考と参加を刺激するため、空間をデザインしている。
集中は向こうからやってくるものではない。
だから、集中できる状況に自ら飛び込むことが必要だ。
エッセンシャル思考における集中とは、多くの問題をじっくり検討できるだけのスペースを確保すること。
ひとつのものに固執せず、つねに視野全体を把握する。
パソコンやスマートフォンの電源は切って、自分の思考に全神経を集中しよう。
そして、数ある可能性のなかから、本質的な事だけを取り出していく。
生き方を変えるためのスペースを、自分の生活のなかに取り入れてみよう。
♢考える時間を取り戻す
刺激過多の現代にあって、考える時間を持つのは至難の業だ。
仕事が忙しくなればなるほど、考える時間を確保することがより必要となる。
同様に、生活がノイズに満ちてくればくるほど、静かに集中できるスペースがより必要となってくる。
世界最大級のビジネス特化型SNSであるLinkedIn(リンクトイン)のジェフ・ワイナーCEOは、毎日合計2時間の空白をスケジュールに組み込んでいる。
その時間には何も予定を入れない。
目的は、ミーティングに振り回され、まわりが見えなくなるのを防ぐためだ。
ワイナーは、「実践しているうちに生産性が確実に上がり、自分のための時間を確保することで、人生の主導権を取り戻せた」と言う。
ワイナーにとって、考える時間を確保することは生き方の表明である。
♢本を読む時間を作る
マイクロソフト社創業者のビル・ゲイツも、1週間の「考える週」を定期的に取っていたことで知られている。
じっくりものを考えて、本を読むための時間だ。
仕事が忙しいときも、ゲイツは年に2回ほど時間をつくって1週間仕事を離れた。
大量の本や記事を読み、最新の技術について学び、これからの事に思いをはせた。
あなたも1週間とは言わずとも、日々のなかに小さな考える時間を差し込んでみるといい。
第6章 洞察
-情報の本質をつかみとる-
『めぐり逢えたら』や『恋人たちの予感』で知られる脚本家、ノーラ・エフロン。
彼女が脚本家として大成功したのは、物語の本質をつかむ力があったからだ。
この力の大切さは、特に高校時代の授業がきっかけで気づいたものだ。
ビバリーヒルズ高校でジャーナリズム入門を教えていたのは、チャーリー・O・シムズという先生だった。
シムズは生徒たちに話の要約を書くという課題を与え、次のようなストーリーを読み上げた。
「ビバリーヒルズ高校のピーターズ校長は今朝、職員一同に研修旅行の知らせを告げた。来週木曜日、職員全員でサクラメントへ行き、新たな教育メソッドに関する会議に参加する。当日は人類学者のマーガレット・ミードや教育学者のロバート・M・ハッチンズ、カリフォルニア州知事のパット・ブラウンによる講演も予定されている」
生徒たちはいっせいに要約を書き始めたが、正しく要約できた生徒は一人もいない。
正しい要約は「来週木曜は学校が休みだ」。
それを聞いたエフロンはジャーナリズムの本質を理解した。
話しを聞いていて、ポイントを見失うことはないだろうか?
情報量に圧倒されて、なにをどうすればいいかわからなくなることは?
依頼が次々と積み上がり、何からやろうかと途方に暮れることは?
あなたにひとつでも思い当たることがあるなら、エッセンシャル思考のスキルが役に立つ。
♢大局を見る
1972年12月29日、飛行機がフロリダ州の国立公園に墜落し、100名以上の死者を出した。
のちの調査で、機体には何の問題もなかったことが判明した。
では、なぜ墜落したのか?
飛行機が着陸態勢に入ったとき、前脚が降りたことを示すランプが球切れで点灯しなかった。
操縦士らはランプを直そうと気をとられるあまり、自動操縦が解除されていないことに気付かなかった。機体は高度を下げ、そのまま墜落した。
つまり、墜落の原因は人間の注意不足だったのだ。
目の前の小さなトラブルに気を取られていたせいで大きな問題を見逃し、取り返しのつかない悲劇が起こった。
ささいなことに気を取られすぎると、大局を見失う。
これは仕事や生き方でも同じことが言える。
♢情報をフィルタリングする
日々出会う情報は膨大で、すべてを調べることはできない。
だから、吟味する情報を見分けるためには、情報や選択肢をフィルタリングする仕組みが必要だ。
非エッセンシャル思考の人は、耳を傾けてはいるけれど、いつも何かを言う準備をしている。
声の大きい意見は聞こえるが、その意味を取り違える。自分がコメントばかりすることばかり考えていて、話の本質をつかめない。
エッセンシャル思考の人は、目と耳がいい。
すべてに注意を向けることが不可能だと知っているので、話の空白を聞き、行間を読む。
映画『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニーは、それをこう言い表している。
「私ってすごく論理的なのよ。だから無関係な細部に気をとられないで、皆が見過ごすものを見抜けるの」
♢ジャーナリストの目を手に入れる
現代の職場は常に混乱状態だ。そんな環境だからこそ、本質を掴み取らなくてはならない。
ここでは、本質を掴み取るための方法を紹介する。
1.日記をつける
ジャーナリストという言葉は、ジャーナル(日記)が語源。
ジャーナリストのもともとの意味は「日々の記録をつける人」である。
つまり、まずは日記をつけてみるといい。
2.現場を見る
現場を見ることで問題の本質を知り、解決策を生み出した例を紹介する。
スタンドフォード大学dスクールの学生だったジェーン・チェンは「低価格デザインを考える」という授業に参加していた。テーマは保育器。
発展途上国へむけて、価格を下げられないかという課題だ。
しかし、ただ単に安くするだけでいいのだろうか?
チェンとクラスメイトたちは、問題の本質を知るために発展途上国へ行った。現地を取材して分かったのは新生児の8割が自宅で生まれているという事実。また、電気が通っていないことが多く、従来の保育器があっても使えない。
つまり本当の課題は、従来の保育器を安くすることではなく、電気を使わない保育器を開発すること。ジェーンたちは実際に現場を見たことで、電気を使わず、安価な保育器を開発することができた。
3.普通を知り、逸脱を探す
レバノン出身の実力派ジャーナリスト、マリアム・セマーン。
彼女は、「知識をつけること」と「別の視点で見る」が本質を掴むコツだという。
彼女は1つの出来事を関係者一人ひとりの立場を想像し、あらゆる側面から見ている。
そうすることで、より深い動機や説明が見えてくる。
4.問題を明確にする
会議中に議題と関係ない話しがあがり、時間がとられてしまう。成果を感じない会議だったという経験はないだろうか。
本質を考え、何を解決しなければならないのか、そのために何をしなければいけないのか。
そのためには、質問を明確にすることが不可欠である。
第7章 遊び
-内なる子どもの声を聴く-
精神科医のスチュアート・ブラウンは、6000人を対象に遊びと成長の調査を行った。その結果、遊びが人間のさまざまな面に良い影響を及ぼすという結論を得た。
遊ぶと体が健康になり、人間関係が改善され、イノベーションが起こしやすくなる。
スチュアート曰く、「遊びほど脳を奮い立たせる行動は他にない」
♢精神は遊びを求めている
遊びは生きるために不可欠なものだ。
最近の研究によると、動物は遊びを通じて主要な認知スキルを発達させているという。ヒトという種も遊びを通じて生き方を身につけている。
それに、最高の思い出や「生きている」と実感をもたらしてくれるのは遊んでいる時間である。
具体的に遊びがエッセンシャル思考に不可欠な理由は以下の3つ。
1.選択肢を広げてくれる
遊ぶことで視野が広がり、常識にとらわれないやり方が見えてくる。
相対性理論を提唱したアインシュタイン曰く「自分自身や自分の考えを振り返ってみると、有用な知識や覚える能力よりも、空想する力の方が大きな位置を占めているようだ」
2.ストレスを軽減してくれる
ストレスは生産性を下げ、好奇心や創造性の働きを弱める。
仕事でストレスを感じたとたん、うまくいかなくなるという経験は誰にでもあるだろう。
最近の研究によると、これはストレスが脳に影響を与えるためらしい。
ストレスによって、感情をつかさどる部分(偏桃体)の働きが強くなり、認知機能をつかさどる部分(海馬)の働きが弱くなる。その結果、うまくものを考えられなくなってしまう。
3.脳の高度な機能を活性化する
精神科医のエドワード・M・ハロウェル曰く、遊びは脳の実行機能に良い影響を与える。
実行機能とは、計画、優先順位づけ、スケジューリング、予測、委譲、決断、分析など。つまり、ビジネスでの成功に不可欠なスキルを多く含むものである。
♢仕事と遊びの関係性を知る
先進的な企業は、遊びの重要さに気づいている。
実際に、オフィス環境に遊びを取り入れている企業も多い。
ピクサーのスタジオでは各自が自由過ぎる発想でオフィスを飾り立てている。
たとえば、天井から床まで『スター・ウォーズ』のフィギュアに覆われた部屋がそうだ。
遊びを取り入れることを、くだらないという思う人もいるだろう。
エッセンシャル思考の人は遊びこそが創造性と探求心の源だと知っている。
だから、こうした小さな遊び心こそが何よりも大切だ。
遊びは本質を探究するのに役立つだけではなく、
それ自体がどこまでも本質的である。
第8章 睡眠
-1時間の眠りが数時間分の成果を生む-
ジェフはバイタリティ溢れるビジネスマンだった。
彼は、世界中を飛び回る生活。本社はシアトルだが、サンフランシスコとインドとケニアにも支社がある。
いつもの打ち合わせでロンドンに飛び、それからインドに飛んで6日間で5都市をまわり、ジュネーブで投資家との会談に出席し、シアトルに戻って1日半過ごす。
そのため、慢性的な睡眠不足だった。
ところが、多忙を極めて体がおかしくなっていった。
内臓が一つひとつ壊れていき、心拍は不規則になり、立っているだけで苦痛を感じた。
血圧は低すぎてすぐに立ちくらみがした。
医者は彼に一生薬に頼って暮らすか、数年のあいだ仕事を離れて静養するかの選択を迫った。
彼はストレスのもとをすべて取り除く決断をした。すべての仕事をキャンセルし、自分の会社も辞めた。
健全な生活のおかげで、体は回復した。彼は今回の経験から学ぶべき教訓を得た。
「自分の資産を守ること」だ。
♢自分自身という資産を守る
私たちの最大の資産は、自分自身だ。
なぜなら、自分への投資を怠り、心と体をないがしろにすると、価値を生み出すための元手がなくなってしまう。
自分という資産を守らなければ、世の中の為に働くこともできない。
ところが、現実には優秀な人たちが自分を壊している。
その最大の原因は、睡眠不足である。
前述のジェフは療養生活のなかで、自分の生き方を見つめ直した。そして気づいたのは、働きすぎることはあまりにも簡単だという事実だ。本当に難しいのは働きすぎないように制御することだ。
彼は自分と同じハードワーカーたちに、こう語りかける。
「自分の能力に自信があるなら、ひとつ大きな難題に挑戦してみてください。目の前のチャンスをきっぱりと断り、昼寝をするんです」
非エッセンシャル思考の人は、睡眠を一種の義務のように考えている。
ただでさえ忙しい中で、さらに時間を食いつぶす足手まといだと思っている。
一方でエッセンシャル思考の人は、睡眠を武器だと考えて自分の力を引き出すために活用している。
計画的に十分な睡眠をとることで、仕事の質を最大限に高めている。
♢十分な睡眠が脳の機能を高める
なぜ人は貴重な睡眠をすぐに削ろうとするのだろうか?
睡眠を削ればもっと働ける、と考えているからかもしれない。
しかし、数々の証拠がそれとは逆を示している。
ここでは、心理学者のK・アンダース・エリクソンがおこなった調査を紹介する。
彼は、一流のバイオリニストは普通の生徒よりも練習時間が格段に多いという事実を明らかにした。
実は、この調査ではもうひとつの重要な事実が明らかになっている。その事実とは、「一流のバイオリニストはよく眠る」という事実だ。
どれくらい眠るかというと、1日平均8.6時間の睡眠をとっている。これはアメリカの平均よりも1時間長い数字だ。
さらに、彼らは週に平均で2.8時間の昼寝をしている。これはアメリカの平均よりも2時間長い。
たっぷり休養することで、1時間あたりの練習効果を最大限に高めているのだ。
まとまった睡眠がとれない人は、昼寝をするだけでもいい。
アメリカ科学アカデミー紀要のレポートによると、レム睡眠が1度でもあれば、脳はバラバラの情報を統合することができる。
つまり、短時間の眠りでも、世界をより深く洞察できるようになる。
現代人の最優先課題は、優先順位づけの能力をキープすることだ。
睡眠不足で困るのは、多くの選択肢のなかから、本当に重要なことを見極める能力が落ちて、優先順位がつけられなくなることだ。
たっぷり眠れば、洞察力が高まり、発想が広がり、より少ない時間でより良い成果を上げることができる。
第9章 選抜
-もっとも厳しい基準で決める-
クローゼットを想像してみてほしい。
「いつか着るかもしれない」というゆるい基準を使っていたら、クローゼットはめったに着ない服でいっぱいになってしまう。
これを「この服が本当に大好きか?」という基準に変えると、中途半端な服が消えるのでもっといい服を入れるスペースが生まれる。
同じことは、あらゆる決断に当てはまる。どうでもいいことを捨てられずにいると、本当に重要なことをする余裕がなくなってしまう。
♢90点ルールを取り入れる
著者は同僚と一緒にdスクールの「人生の本質からデザインする」授業への参加者を選抜した。
基準に従い、応募者を10段階で評価していく。評価9点以上なら、文句なしの合格。6点以下は不合格。
問題は7~8点の応募者だ。著者らは誰を受け入れるか頭を悩ませていたが、「悪くない程度の選択はすべて拒否したほうがいい」ということに気付いた。したがって、評価7~8点の応募者は不合格にした。
この決断のしかたを「90点ルール」ということにする。
90点ルールは、トレードオフを強く意識させるやり方だ。厳しい基準を設けて、大多数の選択肢を容赦なく却下することになる。
厳しい基準を設けるという行為は、間違いなくあなたに自由を与えてくれる。
他人や世の中や偶然に決められるのではなく、自分自身で選ぶ自由だ。
90点ルールは厳しすぎるかもしれない。しかし、妥協すれば自分が損をするだけだ。
非エッセンシャル思考の人は、いつも消極的な基準でものごとを選んでいる。「上司に言われたからやる」「誰かに頼まれたからやる」「みんながやっているからやる」という基準だ。
明確で厳しい基準があれば、誰でも不要な選択肢をシステマティックに却下し、重要な選択肢を選びとることが可能になる。
♢明確で厳しく、そして正しい基準を採用する
イギリスの家具会社Vitsoe(ヴィツゥ)の社長をつとめるマーク・アダムスは、27年のあいだ明確で厳しい基準を貫いてきた。
ヴィツゥはたった1種類の製品しかつくらない。606シェルビング・システムという収納システムに何十年もこだわり続けてきた。
なぜか?
ヴィツゥは非常に厳しい基準で製品を選んでいる。その基準にかなう製品がほかにないなら、それをつくりつづけるだけだ。
ただし、ヴィツゥのすごいところはそれだけではない。特筆すべきは、製品の基準以上に厳格な、人材採用基準だ。
人材採用のプロセスは、非常に厳格でシステマティックだ。
電話面接、社内のさまざまな人間との面接、1日体験入社。1日体験入社のあとはヴィツゥの社員にアンケートが配られる。アンケートの内容は「彼/彼女は、この会社で働くのが好きになると思いますか?」「彼/彼女が入社したら、楽しく一緒に働けると思いますか?」だ。
こうしてお互いの相性を探り、うまくいきそうならさらに何度かの面接を経て採用となる。もしも社員の反応が微妙なら、その候補者はアウトだ。
彼らの厳しい基準は、何がうまくいき、何がそうでないかを冷静に観察した結果だ。
絶対にイエスだと言い切れないなら、それはすなわちノーである。
♢チャンスを正しく選別するには
選択肢から何を選ぶか、というのも難しい問題だが、もっと難しいのは思わぬチャンスが転がってきたときだ。
意外な方向からの転職の誘い。金になるプロジェクトの話し。給料は出ないが、以前からやりたいと思っていた企画。
こんないい話しは、今を逃したらもうないかもしれない。
これを選んだせいで、数日後にやってくる理想的なチャンスにノーを言うことにならないだろうか?
デュアルテ・デザイン社のCEOであるナンシー・デュアルテも会社の方向性について同じジレンマを抱えていた。
もともと、彼女の会社は多様な要望に応えるデザイン会社だった。企業イメージ、ウェブサイト制作、プレゼンテーション制作など、何でもこなす。
だが、「これだ」という個性に欠けていた。
ナンシーはジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』を読んだ。そこには「本当にやりたいことや得意なことがあるなら、そのことだけをやりなさい」と書かれていた。
そこで、ナンシーは「プレゼンテーションのデザイン」こそ自分の強みだと思い当たった。
たくさんのチャンスや仕事を断り、自分たちの専門分野をとことん追求していった。その結果、デュアルテ・デザイン社はプレゼンテーションの仕事に特化してノウハウを積み上げ、世界で随一のプレゼンテーション会社となった。
突然迷い込んできたチャンスを正しく選別するために、次の3つのプロセスを紹介する。
1.そのチャンスについて記述する。
2.考慮するに値するチャンスの「最低限の基準」を3つ書き出す
3.考慮するに値するチャンスの「理想の基準」を3つ書き出す
最低限の基準を満たしていなければ却下する。
理想の基準を満たしていなければ却下する。
すべて満たしているものだけが、考慮に値するチャンスとなる。
♢「これしかない」と思えることを選ぶ
選択の基準を厳しくすると、サーチエンジンが精度を増す。
たとえばグーグル検索で「ニューヨークの美味しいレストラン」と検索すると、広い範囲の検索結果が出る。一方、「ニューヨークのブルックリンで最高のピザ屋」と検索すればかなり絞られてくる。
検索結果は多いよりも、少数精鋭のほうがいい。私たちの目的は「これしかない」と思えることを、ひとつだけ見つけることなのだから。
おわりに
ここまで読んでいただきありがとうございました。
PART2はここまでです。
PART2では「見極める技術」について書きました。
PART3は「捨てる技術」についてです。
日本人はお願いされたら断ることができない人が多いと思います。「嫌われたくない」とか「頼りにしてくれて嬉しい」とか考えると思います。
しかし、それだと本当に自分がやりたいことへの時間が減ってしまいます。
PART3では「上手にノーを言う技術」を始め、多数の瑣末なことを切り捨てる方法を紹介します。