【要約】 『エッセンシャル思考』 PART 1

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目次

はじめに

エッセンシャル思考(著者:グレッグ・マキューン、かんき出版)
の要約です。
本書はPART1~4で構成されています。
この記事ではPART1の部分を要約しています。
約1時間15分で読む分量を、約10分で読めるように凝縮しました。
ちなみに、妻は11分で読みました。

この本は、こんな人におすすめです。
・少ない時間でより良い成果を出したい人
・仕事を断るのが苦手な人
・働きすぎて疲れているなと感じている人

感想、著者及び訳者についてブログに書いています。
気になる方はぜひどうぞ。

PART1 エッセンシャル思考とは何か

エッセンシャル思考とはどのようなものか?

エッセンシャル思考はやり方を変えるためのものだ。

やり方を変えるために、物の見方を大きく変えることが必要になる。
そのためには以下の3つの思い込みを克服しなければならない。

・「やらなくては」ではなく「やると決める」。
・「どれも大事」ではなく「大事なものはめったにない」。
・「全部できる」ではなく「何でもできるが、全部はやらない」。

この3つの考え方が身に付くと、本当に大事なことを見極め、最高のパフォーマンスを発揮できるようになる。

第1章
エッセンシャル思考と非エッセンシャル思考

第1章の導入ではサム・エリオットという人物のエピソードから始まる。

彼は、会社では仕事を断ることなく全て引き受けた。

しかし、全てが中途半端になり周りからの信用を失っていった。

そこからエリオットは仕事を「断る」ことを始める。

最終的に「この仕事は自分にとって一番重要か」が基準になる。

その結果、仕事の品質が上がり、家族と過ごす時間が増えた。

このように「何もかもやらなくては」という考え方をやめて、断ることを覚えたとき、本当に重要な仕事をやり遂げることが可能となる。

このエピソードはまさに「エッセンシャル思考」そのものだ。

♢より少なく、しかしより良く

商業デザイン界の巨匠、ディーター・ラムス。彼が不要なものを取り除いたシンプルすぎるレコードプレイヤーを設計した。

どれほどシンプルにしたのか。

当時のレコードプレイヤーは、重厚な木の覆いがついているのが一般的。それに対して、プラスチックカバーだけがついただけのものを設計したのだった。「絶対に売れるわけがない」といわれるも、世界中に反響を呼び起こした。

彼の、自らのデザインに対する考え方が「より少なく、しかしより良く」。
エッセンシャル思考はこの考え方を追求する生き方だ。

「今、自分は正しい事に力を注いでいるか」と絶えず問い続ける。

エッセンシャル思考の人は適当に全部やろうとは考えないし、流されない。

つまり、エッセンシャル思考とは自分の力を最大限の成果につなげるためのシステマティックな方法なのだ。

♢本質を見失うことの代償は大きい

著者は、妻の出産直後に会議へ出席した。

事情を知っているクライアントも顔色は微妙。

会議の成果があろうとなかろうと、妻と子どもを置いてまでいく価値があるはずない。

この体験から著者は以下の大きな教訓を得る。

自分で優先順位を決めなければ、他人の言いなりになってしまう。

著者はこれがきっかけで「人の決断」に強い興味を持つ。

非常に優秀な世界的リーダーたちにエッセンシャル思考を指導しているなかで、「なぜ多くの優秀な人々が自分にとって大事なことを見分けられなくなっているのか」に疑問を持つ。

♢優秀な人ほど成功のパラドックスに陥りやすい

世の中の風潮は断ることを極端に嫌う。さらに、なんでも引き受けることがいいことで、断ることは悪い事のように思われている。

こうした風潮のせいで優秀な人は「成功のパラドックス」に陥る。

「成功のパラドックス」とは以下の通り。

第1段階
目標を見定め、成功へと一直線に進む。

第2段階
成功した結果、「頼れる人」になる。
多様な仕事を振られるようになる。

第3段階
やることが増えすぎて、全てが中途半端になる。

第4段階
本当にやるべきことができなくなる。
成功したせいで、自分を成功に導いてくれた方向性を見失う。

つまり、成功を求めることによって、失敗してしまう。

♢人はなぜ方向性を見失うのか

著者の考えは以下の3つ。

・選択肢が多すぎる
多くの選択肢を持つことにより、大事なものを見極められなくなっている。
心理学では「決断疲れ」という状態。

選択の機会が増えすぎると、人は正しい選択ができなくなる。

・他人の意見がうるさすぎる
インターネットを通じて多くの他人の意見がなだれ込みすぎている。

・欲張りの時代
世の中が「全部手に入れよう、全部やろう」という考え方である。
知らず知らずのうちに誰か(上司、同僚、顧客、家族等々)が私たちのやることを決めてしまう。そうして思考停止に陥り、自分にとって何が大事なのかわからなくなる。

自分で選べない人は、他人の言いなりになるしかない。

オーストラリアのホスピス(終末期患者に対して、安らかな最期を迎えてもらうために治療やケアを行う施設)で看護師をしていたブロニー・ウェアは死を迎える患者に後悔していることを聞いて記録していた。

その結果、もっとも多かったの答えは「他人の期待に合わせるのではなく、自分に正直に生きる勇気がほしかった」だった。

自分に正直に生きるというのは、不要なことを的確に見定めて排除していくこと。そのためには、やることを減らし、人生をシンプルにして、本当に重要なことに集中しなければならない。

大事なものを知り、不要なものを捨て、決めたことをスムーズにやり遂げる。

人生のあらゆる場面で、仕事や用事を正しく「減らす」。

本書はそのやり方を紹介する。

♢本書の使い方

本書は4つのパートに分かれている。

各パートの概要は以下の通り。

PART1 エッセンシャル思考とは何か
エッセンシャル思考の基礎となる3つの考え方の紹介。
3つの考え方は以下の通り。

1.選択
2.ノイズ
3.トレードオフ

PART2 見極める技術
このパートでは見極める技術について説明する。

例えば、選ぶ基準を明確にする。
「自分は何が大好きか?」
「自分は何がいちばん得意か?」
「世の中の大きなニーズに貢献できるのは何か?」

以上の3つを基準に何をやるかを最初の見極めに全力で取り組む。

PART3 捨てる技術
このパートではなるべく相手を傷つけず、上手く頼みを断るための方法を考える。

周囲に認められたいという思いから、なんでも引き受けてしまう人は多い。

しかし、最高成果を上げるためには断ることも必要だ。

マネジメントの父、ピーター・ドラッカー曰く、
「できる人は『ノー』と言う。」

PART4 しくみ化の技術
このパートではなにかを実現するために強い意志を必要としない仕組み作りについて解説している。

♢自分で選ぶという最強の武器を手に入れる

エッセンシャル思考を身に付けると、行動を取捨選択できるようになる。

他人の期待に合わせるのではなく、自分に正直に生きる勇気を手に入れることができる。そして、誰もが自分の能力を最大限に生かして有意義な生活を送ることが出来るようになる。

つまり、「自分で選ぶ」は最強の武器であり、仕事や生活で最高のパフォーマンスが出せるようになる。

エッセンシャル思考の生き方を選ぶのにためらう理由はない。

ある日、目を覚まして「ああ、自分に正直に生きるより、どうでもいい仕事を押しつけられる生活の方が良かったなあ」と後悔する可能性があるだろうか?

第2章 選択
-選ぶ力を取り戻す-

第2章は著者の驚きから始まる。

なぜ驚いたのか。

自分は何がしたいのかを紙に書き続けること20分間。
現在進行形で取り組んでいる法律やロースクールに関する言葉が無かったからだ。

法律を学ぶことにしたのは選択肢が広くなるから。

弁護士としての開業、法律関連の書籍執筆、教師、起業向けのコンサルティング。しかし、選択肢を広げるために全てをやろうとした結果、どれも中途半端になった。このままでいいのか、と不安が増していく。

そんななか、アメリカの友人から結婚式の招待を受ける。(著者はこのときイギリスに在住)アメリカ滞在中に時間が許す限り教育や執筆関連の仕事をしている人たちに会いに行く。そこで、ある教育系NPOの代表の言葉が著者の心をとらえる。

「もしアメリカに住むことにしたら、うちのコンサルティングチームにぜひ力を貸してくださいね」

心をとらえたのは「もしアメリカに住むとしたら」という仮定のほう。

その一言で著者は「今いるところにいる必要はない」と考えるようになる。

さらに、「もしたった一つのことしかできないとしたら、自分は今、何をやるのか?」と自問した。その結果、「法律」はなかった。

イギリスに帰国して2週間後にロースクールを辞め、アメリカに渡る。
そして、執筆と教育のキャリアをスタートさせた。

著者はこの体験から「選ぶ」という見方が大きく変わる。

選択とは、行動。

与えられるものではなく、つかみとるもの。であると。

♢「選ぶ」ことを選ぶ

選ぶ能力は誰にも奪えない。
ただ、本人が手放してしまうだけだ。

どんな選択肢があるかにばかり目を向けず、何を選ぶかを大切にする。

♢人はなぜ選ぶ力を手放してしまうのか?

それは「学習性無力感」という現象が原因。

たとえば、算数の初歩でつまづき、解けない問題に苦しむと苦手意識を持ってしまう。その結果、何をしても無駄だと思いこみ、理解しようという努力を投げ出してしまうこと。

仕事でいくら努力しても無駄だという経験をした場合、反応は大きく2つに分かれる。

一方は努力をすっかりやめてしまう人。
もう一方は、逆に働きすぎる人。
働きすぎる理由は、選択肢を考えようとしないので全てを引き受けてしまうから。

エッセンシャル思考を身につけるためには、選ぶ行為に自覚的でなくてはならない。自覚的になるために、選ぶ力は自分だけのものであり、何者にも奪えないと理解すること。

自分自身の選択を取り戻し、「選ぶ」ことを選ぶことがエッセンシャル思考の第一歩。

第3章 ノイズ
-大多数のものは無価値である-

第3章はジョージ・オーウェル著『動物農場』に出てくる「ボクサー」という馬のエピソードから始まる。

ボクサーは真面目で屈強。他の動物たちが困難に出会うたびに、「僕がもっと働こう」と言って仕事を引き受ける。結局、ボクサーは働ぎすぎて倒れ、解体業者のもとへ送られる。

私たちもボクサーと同じ思考に陥ってはいないだろうか。
残業を増やして根性で乗り切る。

仕事を抱えていてもトラブル対応まで引き受けようとしていないだろうか。

人は幼いころから努力の大切さを教えられて育つ。

真面目に働けば成果は上がるが、そこには限界があるはずだ。

これ以上労働時間を増やして成果が上がるだろうか。
やることを減らしたほうが、生産性が上がる場合もあるのではないか?

著者は幼少期に人生の大きな学びを得た。経緯は以下の通り。

お小遣い稼ぎのために新聞配達のアルバイトをする。時給は1ポンド。

コスト意識が変わり、欲しいものがあると「新聞配達何日分」と考えるようになった。そこで、もっと早くお金を稼ぐために、隣の家の車を洗車することにした。料金は1台につき2ポンド。1時間で3台できるため時給6ポンド。

その経験から「ある種の努力は、ほかの努力よりも効果が大きい」という学びを得る。

この学びは大学生時代のアルバイトにも生きることとなる。

アルバイトは時給9ドルのカスタマーサービス。

著者は、時間とお金ではなく、時間と成果の関係に着目し、「この仕事でもっとも価値のある成果は何か?」を考えた。

もっとも価値のある成果はなにか。

それは、解約するつもりの顧客を引き止めること。著者はそれに全力を注ぎ、報酬が増え、会社に大きく貢献することができた。

この経験から言えるのは、
「努力は大切だが、成果に比例するとは限らない」ということ。

がむしゃらに頑張るよりも「より少なく、しかしより良く」努力したほうがいい。

♢重要な少数は瑣末な多数に勝る

「80対20の法則(パレートの法則)」
19世紀末に経済学者のヴィルフレド・パレートが提唱する。
成果の80%は20%の努力に起因するという法則。

やがて1951年に品質管理の父と呼ばれるジョゼフ・M・ジュランがこの法則を拡張し、「決定的に重要な少数の法則」を唱えた。

ジュランは品質管理の研究をするうちに、問題のごく一部を改善することにより全体の品質が大きく改善されることに気付いた。

彼はこの発見を実証するため、日本の企業にテストプロジェクトを依頼する。

当時の日本製品が「安かろう悪かろう」と言われていた時代。

日本の従業員はジュランの言う通り、重要な問題にだけリソースを集中させた。
その結果、品質をめざましく改善させる。

「重要な少数」が「瑣末な多数」に勝る。

すなわち、大多数のものごとには価値がなく、ごく少数のものごとに莫大な価値がある。

努力の量と成果が比例するという考えを捨てたとき、エッセンシャル思考の大切さが見えてくる。

非エッセンシャル思考の人は、大多数の物事が重要だと考える
エッセンシャル思考の人は、大多数の物事が不要と考える

第4章 トレードオフ
-何かを選ぶことは、何かを捨てること-

トレードオフとは、何かを達成するために何かを犠牲にしなければならない関係のこと。

トレードオフの好例として、サウスウエスト航空のビジネス戦略を説明している。
創業者のハーバート・ケレハーはトレードオフを意識してビジネス戦略を決めていた。

サウスウエスト航空は格安航空会社。大手航空会社がハブ空港を拠点に路線を拡大するなかで、サウスウエスト航空は2都市間を単純につなぐ路線にこだわった。さらに、機内食を出さず、座席指定の廃止し、単純に乗り物として利用してもらうことにした。

金のかかるオプションは、この会社の本質から外れている。

ケレハーは明確なビジョンを持ち、不要なものを切り捨てた。

その結果、サウスウエスト航空は大きな利益を上げることとなる。

♢トレードオフを無視することの代償

トレードオフを無視すると、取り返しのつかない損失が待っている。
前述の通り、サウスウエスト航空が成功すると、他の航空会社もやり方を真似し始めた。といっても中途半端に片足を突っ込む形で、だ。

その競合企業のひとつが、コンチネンタル航空(現在はユナイテッド航空に併合)。コンチネンタル航空はサウスウエスト航空を見習い、2都市間を単純につなぐ路線のサービス「コンチネンタル・ライト」を開始した。

しかし、ハブ空港を拠点とする従来の通常路線も並行しておこなっていたため、思っていたほどコストが削減できなかった。コンチネンタル航空のサービスは低下していき、損失は数億ドルにも及んだ。

なぜ、こんな失敗をしてしまったのか。

それは2つの相容れない戦略を両立させようとしたからだった。

全てを同時にできると思ったら大きな間違いだ。
何かに「イエス」と言うことは、その他すべてに「ノー」と言うこと。

トレードオフから目をそむけても、
トレードオフから逃れることはできない。

♢人はどれかを選ばなくてはならない

著者があるとき相談を受けた会社は、優先順位が決められずに困っていた。
翌年度に実行するプロジェクトを決めたいが何を選んでいいかわからない。
最優先プロジェクトは18個。著者は5個に絞ってくださいと提案するが、それでも最優先は17個だった。

プロジェクトを管理していたマネージャーはトレードオフを受け入れられなかった。5つのプロジェクトしかできない時間と人員で17個のプロジェクトを強行することにした。

結果は当然、失敗だった。

トレードオフが起こるのは、どちらも捨てがたい状況。
しかし、どちらも取るのは不可能だ。

非エッセンシャル思考の人は「どうすれば両方できるか」を考える。

エッセンシャル思考の人は、「どの問題を引き受けるか」を考える。
さらに、自らトレードオフを選びとる。誰かに決められる前に自分で決める。

エッセンシャル思考の人は、「何を諦めなくてはならないか?」と問うかわりに、
「何に全力を注ごうか?」と考える。

PART1はここまで。
PART1では「エッセンシャル思考とは何か」について書きました。

PART2は「見極める技術」についてです。
PART2以降は実践的な内容に入っていきます。

次のPART2はこちらからどうぞ。

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